KASOUKEN  一般社団法人  火 葬 研
 ASSOCIATION OF RESEARCH INITIATIVES FOR CREMATION,FUNERAL AND CEMETERY STUDIES
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     代表理事 会長(武田至)から



人間にとっての終(つい)の空間を考える


 故人を悼み、遺族を弔い、冥福を祈る。それは、古代から人類が行ってきた大切な営みのひとつである。死者を送る儀式には、民族性や宗教観が色濃く表れ、土葬、火葬、風葬、水葬、土葬、天葬とさまざまな方法で遺体を葬ってきた。
 わが国では、ほぼ100%が火葬となり、その普及率は世界的にも類がないほど高く、インドにその起源を見出すことができるが、火葬場自体も日本独自の葬祭施設として発達を遂げてきた。
 なかでも会葬者が揃い、柩が火葬炉に納まるのを見送り、骨を拾うことの行為は、火葬場という空間をいっそう意味深いものとしている。日本の火葬場の特徴として、火葬場は故人との最後のお別れを行い、火葬炉に柩が入るのを見送り、焼骨を確認し故人が亡くなったのを受け入れる、死を受容する場であるといえる。
 人の死は急に訪れる。親しい人の死は遺された人々の深い悲しみとなり、心の整理がつかないまま葬儀に臨むことは決して少なくないだろう。火葬はやりなおしのきかない行為であるがゆえに、非常にデリケートにならねばならない公益施設といえる。

 わが国では明治期の政策の影響もあって、衛生面での誤解が流布し、単なる遺体処理場として扱われてきた時期がある。火葬場を居住地から離し、隔絶させる政策がなされてきた。お別れの場でもあるが、火葬場が忌み嫌われてきた歴史は否定できない。
 かつて集落のなかで焚かれていた送り火は、いつしか生活圏から隔絶され、人の死が遠いものとなり、行政も積極的な関わりを避けるようになっていった。そして、計画・設計に関する指針や基準が存在しないままに今日に至っているのである。
 ひるがえって火葬場を建築でみると、スウェーデン、ストックホルム市には世界遺産となった「森の火葬場」があり、多くの人が観光でも訪れている。日本でも“名作”といえるものは決して少なくない。弔いの場とは、設計者の精神がもっとも純粋に発露しうるのではなかろうか。
 火葬炉設備の改善により、火葬による排ガスが周辺環境に与える影響も問題ない状況となり、住宅地での建設もみられるなど、嫌悪施設ではなく、生活関連施設としての認知も高まってきている。住民の火葬場に対するイメージも変化し、考えも変わってきている。
 偏見がみられた火葬場の建設にも、多くの方が関わるようになり、住民参加の火葬場建築など他の建築手法と変わらないようになってきた。ある意味火葬場が一般化してきたのだといえよう。そういった意味では、本会が果たしてきた役割は大きいものと思われる。

 高度経済成長期に建てられた火葬場の多くが、機能面を含め更新時期を迎えている。親戚・近所づきあいの変化や個人の価値観の多様化によって、地域の風習によるところが大きかった葬祭は、転換期を迎え、多様化しつつある。そうしたなかで、遺族の心情への配慮を中心に計画され、運営される施設が、少しずつだが増えてきている。
 しかし死亡者数の増加や、自治体の財政状況の悪化に伴い、効率優先の処理場的な施設建設や運営になりつつある。
 火葬場は、人間にとっての“終(つい)の空間”である。そんな観点に立ち、日本の火葬場の歴史を振り返り、今後の葬送の変化を見据え、これからの火葬場に求められるものを考えていく必要がある。
 日本独自の火葬文化をどうするのか。火葬機能とお別れ空間、待合空間をどう結び付けるか。技術進歩も進み、もっとより良いお別れ空間があるのではないかと思う。
 住民が求める理想の火葬場を考えていく。火葬研としてそのような火葬場づくりのお手伝いができればと思う。




平成29年5月


代表理事 会長

武 田   至





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