発想の扉
文化・歴史
火葬場
墓 地
施 設
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トリビア‐火葬場 |
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火葬場オフィスに大量のお菓子 火葬場(内部空間)/イギリス |
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イギリス、ミルトン・ケインズにあるクラウンヒル火葬場は明るく快適な職場環境づくりを行っている。オフィス内がオープンな雰囲気で外部へもガラス張りのワークルームもさることながら、アメニティスペースが充実されていた。バスルームにいい香りを漂わせ、オフィスキッチンには、オーブンレンジを備え調理ができる。ロングカウンターには大量のお菓子が置かれ、リフレッシュカフェコーナーのような設えとなっていた。飲み物も含め、職員が自由に飲食することが出来る。これは所長のポケットマネーで用意されたものであるらしい。職員の感想はノーコメントであったが、喜んでいるようであった。
施設整備の段階から、職員の労働環境を良くしたいという具体な運営意識をもって携わり、実現されている。日本の斎場整備の発想には少ない、良いサービスを生み出す「ゆとり」のようなものが感じられた。
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火葬炉室内のステンドグラス 火葬場(内部空間)/イギリス |
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ミルトン・ケインズはロンドンから70kmの距離にあり、計画人口25万人を目指したイギリス最大のニュータウン。クラウンヒル火葬場(Crownhill Crematorium)も都市計画の一部として1982年に建設された。住宅地にあるが森に囲まれた敷地は7haで、火葬炉は2基、1室の礼拝堂があった。その後、人口増加への対応、火葬炉の公害防止対策の問題、礼拝堂が手狭であることなどから、2010年から2011年にかけて新しい火葬場が建設された。
新しい火葬場の葬儀式場から火葬炉へ続く湾曲した丸い天井は目を見張るような幻影を作り出す。コンクリートに対して要所に木材を使い、各所に散りばめられたステンドグラスを通す昼光は、柔らかく落ち着いた雰囲気を会葬者だけでなく、働く人にも与える。日本の火葬場の火葬炉機械室は、装飾は排除されるが、クラウンヒル火葬場の火葬炉機械室はステンドグラスが設けられている。理由は働く人の環境を良くしたいといった所長の考えによるもので、職員に対するやさしさからきている。
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海辺の白い火葬場 火葬場(立地・環境)/東京 |
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この白い火葬場の道路を挟んだ反対側は海である。天気が良ければ最高のロケーションである。しかし、ひとたび台風が来ると、海水を被ってしまうほど近い距離である。台風直撃の時は火葬もままならない。
小さな島は平地が少ないため、立地の制限を受けてしまう。常に潮風を浴びていることもあり、色んなものが直ぐに錆びてしまう。
火葬場が出来る前は、近くの場所で野焼きが行われていた。流れ着いた人などの火葬を行った跡地で、今もその痕跡が残っている。
島に葬儀社がなく、委託業務行っている会社が棺などの手配を行い、霊柩車の運行も行う。葬儀は自宅で行われる。利用者は少ないが、島民にとっては大切な火葬場である。
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火葬場の跡地はどうなるの 火葬場(立地・環境)/日本 |
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上段写真は、2013年(平成25年)に同一敷地内に新火葬場が完成し、かつての火葬場跡地を駐車場とした事例です。
下段は、2015年(平成27年)に別敷地に火葬場が完成し、旧火葬場跡地を平地にした写真です。2019年には床面積800㎡、鉄骨平屋建で250名が収容可能な避難所機能を持つ防災コミュニティーセンター(大ホール、多目的室、調理実習室)が完成します。
更地になると、火葬場があったことがまったくわからなくなります。
どちらの写真からも「火葬場の跡地だから・・・」など気にしなくても問題ないと言うことです。
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住宅より火葬場が先に建つ? 火葬場(立地・環境)/三重 |
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児童公園の滑り台から火葬場を見た写真です。
この公園は火葬場が建ってから分譲された新興住宅団地の中にあります。火葬場の隣には、墓地も分譲されました。昼間はいつも子供の声が響いています。
地域伝統の折り紙を模した屋根デザインそして美術館のような佇まいは、住む人に素直に受け入れられています。
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火葬炉の熱 火葬場(専門技術)/ノルウェー |
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火葬炉から排出された排ガスは急速に冷却された後、排ガス処理装置を通り、強制的に排気等から排気される。火葬炉内温度は時には1,000℃にもなる。かなりの熱量である。感情的な面もあり、日本では熱交換されたエネルギーはそのまま外部に排出されている。
海外でも倫理面でどうかといった反対意見はあるが、それよりも環境保護が優先されるということで、火葬炉の熱は再利用される場合が多い。
写真はノルウェー・オスロの火葬場の地下にあるお湯のタンクである。水熱交換器で発生したお湯はこのタンクに貯蔵される。貯蔵されたお湯はエントランスのロードヒーティングや火葬場内の空調にも使われる。
といっても、ただ単に効率的に火葬を行っているわけではない。遺族の希望に沿ったお別れができるように配慮した運営が行われている。
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炉前から見える風景 火葬場(内部空間)/日本・山形 |
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「杉の森に送る」
街づくりの一環として、地元の金山杉を使った、杉の森の懐をお別れの場としたのが金山町火葬場である。
金山町は山形県の北に位置する人口約6,000人の町である。羽州街道沿いに開けた宿場町で、白壁造の土蔵、住いが周囲の山々の緑に映える落ちついた街並みはイサベラ・バード女史(英国地理学会特別会員)が訪れてから一世紀過ぎたが、今もあまり変わりない
『街並み(景観)づくり100年運動』を町の基幹プロジェクトとして位置付け、推進をしている。これは100年をかけて自然(風景)と調和した美しい街並みをつくっていこうというものでる。
炉前ホール横にあるベンチに座ると、杉の木立が目に入る。まるで森の中にいうような感じが伝わってくる。この雰囲気が気に入り、町外から利用される人もいるという。
まさに森の中の火葬場である。
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地味過ぎた!派手な演出に変更したフランス・グルノーブルの火葬場
火葬場(内部空間)/フランス |
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フランス・グルノーブルの火葬場は郊外の山の斜面を利用して造られている。1986年に建設され、火葬炉2基、礼拝堂1室、待合室2室と待合ロビーで構成されている。夜8時まで火葬を行い、1日12体の火葬が可能である。
設計者の提案が各所に盛り込まれ、周辺の景観にあわせた勾配屋根となっており、礼拝堂や待合室は外部の景観を取り入れた空間デザインとなっている。
柩は地下の搬入口から運ばれる。1階の礼拝堂にはリフトで上げられる。お別れの儀式が終わると柩は土葬されるように地下に下がり、火葬炉前に運ばれる。
柩安置台は当初は石貼りのシンプルなデザインであったが、その後責任者の発案により、LEDで装飾され光の演出が行われるようになった。評判は良いというお話しでした。
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家具もタペストリーも明るく、
ラテンの国の火葬場の待合室
火葬場(内部空間)/フランス |
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明るくて陽気なタイプの人のことを、よくラテン系とかラテン気質とか言います。
「ラテン系」ってずっと何となくブラジルなどの中南米やイタリア人のことだと思っていたたが、フランス人もラテン系に入るとのこと。火葬の際についつい感情が高ぶってしまうようである。
そのため柩が火葬炉に納まる様子は、待合室でTVのモニターでみるようになっている。その際、火葬がどういうものかといったビデオも見せるが、柩が収まる瞬間以外は、自然の景観などを流し、ショックを和らげるようにしている。
待合室には赤いソファが置かれ、大きな花が描かれたカーテンが使われるなど、落ち着きを求める日本の火葬場の待合室とは異なり、明るい暖色系の色調の室内となっている。
当日骨壷を受取る場合もあるが、時間を空ける場合が多い。特に関係が深いとショックを受けことになるため、配偶者が亡くなった場合などは、2日後に遺骨を渡すケースもある。
そのため敢えて明るい室空間にしているのかも。
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木立ちをイメージしたコンクリート製柱が並ぶ
ドイツの森の火葬場
火葬場(内部空間)/ドイツ |
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ベルリン郊外にある、緑豊かな墓地に併設されたバウムシューレンヴェク火葬場は、東西ドイツ統一後の1998年に完成した。ベルリン市が管理する緑豊かな墓地の中にある。
打ち放しコンクリート造の一階中央は、木立をイメージした29本の丸柱が乱立した空間となっている。木立のホールと呼ばれ、天井のトップライトから木漏れ日のように光が入り込む。この空間で会葬者は葬儀の前後に集まり、木立の中に隠れ、語り合い、悲しみ、別れを告げるための道を見つけ出している。
木立ちのホールを取り囲むようにある礼拝堂は遺族の状況に応じ、様々な悲嘆とお別れに向かうことになる。祭壇の背面はガラス張りとなっており、周辺の緑が借景として取り入れられている。自動化されたルーバーは、太陽の光を調整するとともに、室内からの景観に変化をもたらしている。
外部の緑を室内に上手く取り入れた、森の中の雰囲気が感じられる火葬場である。
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火葬炉がモニュメントのように並ぶ火葬場
火葬場(内部空間)/デンマーク |
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デンマークのコペンハーゲンには2ヵ所の火葬場があります。
そのうちの一つビスベアウ火葬場は2003年1月に供用を開始しました。旧火葬場からある門をくぐると、低木の緑の中の空いた空間に建物が配置されています。
炉室部分のみ高くはなっていますが、レンガの外壁の箱形を切り抜いた、細長い低層の建物とし、窓のスリットと中庭の構成が明るい室内空間を作り出しています。
曲面の天井のハイサイドライトから光が降り注ぐ明るい炉室に、銅板のカバーで覆われた火葬炉が4基、まるでモニュメントのように並んでいます。日本の火葬場の様に機械室といった雰囲気は全くありません。
この火葬場はそこで働く人の労働環境も配慮されており、中庭に面した明るい監視室に、休憩室も設けられています。
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火葬のしくみ 火葬場(専門技術)/日本 |
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火葬炉設備は、排ガスなどの燃焼性能だけでなく、葬送のための設備としての性能も要求されることになります。
火葬炉本体は主燃焼室と再燃焼室から構成されます。主燃焼室は遺体や柩を燃やす部屋です。再燃焼室は主燃焼室からの排ガスを再燃焼させ、完全燃焼を図ることにより無煙無臭化を図ります。再燃焼室から出た排ガスを冷却し、集塵装置で除塵を行ったあと、誘引排風機によって排気筒から強制排気されます。
高い煙突が必要ないため、今の火葬場には煙突はありません。
排気はどうなの?という疑問がありますが、排気筒から排気されています。
排気筒は建物に上手くデザインされているため、外からは見えない様になっています。
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世界の火葬炉の形式 火葬場(専門技術)/世界 |
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日本の火葬炉は、遺族や会葬者が収骨を行うことが前提で、焼骨をなるべくきれいに残すように燃やします。のど仏が残るかどうか気にする方も多いです。
火葬炉の形式は台車式が多く、それも1体ずつ火葬を行うバッチ式です。台車上で火葬を行い、台車が移動するため、焼骨がきれいな形で残りやすいといった特徴があります。
日本以外の国の火葬炉はどうでしょう。ほとんどの国が効率的な観点から連続的に燃やす固定床式となっています。
柩を直接火葬炉に納め、焼骨は掻き棒で掻き出し、下にあるボックスに落とされます。焼骨を搔き出すと、直ぐに次の柩を納めます。
一見同じように見える火葬ですが、火葬炉には大きな違いがみられます。
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大きな扉、開けてみませんか? 火葬場(専門技術) |
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この写真、人間が小さいのではありません。扉が大きいのです。
幅約3m、高さ約5mのこの大きな扉の奥は、火葬炉の炉室へつながっています。
当然、この大きな扉は人間の出入りのための扉ではなく、炉の搬出入のための扉になります。
大きな扉を見ると無性に開けてみたくなるのは私だけではないはずです。
この扉もずっしりと重みのある、開け応えのあるいい扉でした。
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庭がつくりだす別れの場 火葬場(内部空間) |
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平成29年度から供用開始となった斎場の施設見学会へ参加させていただきました。私が特に惹かれた点は庭の風景でした。桜の庭、登庭、四季の庭、そして写真の中庭(静寂の庭)。待合空間から臨む庭の風景は、故人との最後のひと時を心安らかに過ごせる空間として、施設整備方針の一つ「別れの時を静かに感じられる場」の醸成に寄与していると感じました。
晴天の陽射しが降り注ぐ日中の見学会でしたが、夕暮れ時の庭が作り出す風景、そして冬時の日の短い季節、陽が落ちた後のガラス越しに臨む庭の風景と、ガラスに反射するご遺族自身の姿を想像した時に、別れの時間をデザインすることへの興味を改めて感じさせられました。
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